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作成:2020年6月9日更新:2025年2月27日
はじめに
数年前、息子が少年サッカーを始めました。とても楽しんでいるようで、某J下部のセレクションに合格し、さらに本格的にサッカーに取り組んでいるようです。
私自身は違うスポーツを楽しんできたので、サッカーに関しては初心者でした。息子が小学生のうちは体力的に負けるつもりはなかったので、休日に一緒にボールを蹴っていれば、父の威厳は保てるはずと思っていましたが、某J下部に入る頃には(4年生でしたが)、スキル的には全然敵わない感じになりました。体力も付きましたし。
私からはサッカーに関してアドバイスすることはありませんが、息子とスポーツに関して話すのは父としての夢ですし、サッカー自体の奥深さに興味を感じて、たくさんサッカーに関して勉強しました。息子も、一緒に好きなチームの試合を見ていると、最初は「ネイマールのドリブル、かっこいい!」的なことしか見えていませんでしたが、だんだんボール以外の部分で起きていることも見えるようになってきたみたいで、「攻めている時の、ブスケツの守備の準備がポジション良いよね」とか、「あの選手、反対見てなかったね」的なコメントを話してくれるようになり、勉強が楽しくなりました。
サッカー少年の父・母であれば、よく遭遇するシチュエーションに、コートサイドからの大声でのアドバイスがあります。「怒鳴るだけのざんねんコーチにならないためのオランダ式サッカー分析」という本があるくらいなので、コーチにもたくさんいますが、「走れー」や「球際!」くらいの残念なアドバイスはカッコ悪いです。「裏!」や「仕掛けろ」など、チームの戦術を理解していなかったり、子供達の力量にあっていないアドバイスも同じで、まわりで聞いていてカッコ悪いなぁと思います。サッカーが分かってくると、そういうカッコ悪いことはなくなりますし、そもそもコーチ以外がアドバイスすること自体が有害ということは、たくさんの育成本で出てきます。例えば、「JACPA 子どもがぐんぐん伸びるジュニアサッカー」とか。私は、試合前に「楽しんでね」くらいしか声をかけないですし、試合中はカッコ良いプレーに拍手するくらいです。
こういう感じなので、父がサッカーに関して勉強することは子供にとってメリットなさそうですが、たぶん、次の点で少しは価値があると思っています。
- どういうプレーをカッコいいと褒めるかで、子供のサッカーに対する価値観が変わる
- 基本的な身体の動かし方(コーディネーション)について、遊びの中で教えてあげられる
例えば、ゴールしか褒めないと、ゴール以外の有効なプレーを学ぶことがなくなります。良いポジション/体の向きを取り続けたり、良いトラップやターンなど、一見地味だけど大切なプレーを褒めることで、サッカーをより深く理解するようになります。こういうプレーは、サッカーを分かってないと褒めてあげられないプレーです。
また、サッカーだけしかできない子供は、すぐに行き詰まります。野球やバスケやスケボー、ボルダリングなど、いろいろなスポーツを一緒に遊ぶことで、小学生年代では最も大切なコーディネーションを高めることができます。楽しいですし。
前置きが長くなったのですが、サッカー本とは書いていますが、走り方やコーディネーショントレーニングなど、分野としては、サッカー以外の本もあります。
基本的な身体の動かし方

まずは、この本。私が子供の頃は、運動神経は生まれながらに決まっているものという認識でしたが、今は違います。運動神経とは何か、どうやったらトレーニングできるかが簡単に分かります。難しく考えず、身体を動かして遊べば良いんですけどね。親子で遊ぶときに、この本の動きを意識すると、子供の運動神経が自然と身に付きます。

次は基本的な走り方。DVD付きで分かりやすいです。当たり前ですが、秋本さんの走り方がカッコ良過ぎて、子供でも、正しい走り方が理解できるはずです。

スピード、アジリティ、クイックネスの能力を上げるために、本格的なSAQトレーニングを行うのは、クラブのトレーニングにお任せするとして、どういう動きが必要になるのか、という基本的なことは知っていたいものです。これは、DVD付きなので、分かりやすいですし、子供がのってくれば一緒に遊びでやっても良いと思います。あくまで遊びで。
もう一冊、基本と言えば、この本。8人制と書かれていますが、3人でも、11人でも、サッカーの基本は同じ、ということが理解できます。本を読みなれている小学生であれば理解できる内容です。

文字通り、教科書です。守備は細かい部分まで理論的に説明できるので、とても分かりやすいです。”新しい”と書かれていますが、とてもオーソドックスな内容だと思います。

たぶん、「守備の。。」がある程度売れたので、作成されたのだと思いますが、やはり攻撃は理論的に説明が難しい部分があるので「教科書」とは言えない内容です。ビルドアップの出口までは理解が進みますが、最終的にどうやってゴールを奪うか?は、選手のひらめきに託されます。そこが、サッカーの美しさです。一つの考え方として読めば良いと思います。

こちらが守備に関しては決定版かと思います。「新しい守備の教科書」ではなくて、こちらを読めば良いと思います。が、amazonではユーズドがプレミアがついて販売されているようです。




イタリア人レナート・バルディさんがイタリアサッカーの現場で見てきたこと、考えてきたことをまとめた内容です。①、②までは本当に面白かったです(だんだんトーンダウン)。冨安選手がボローニャにいたころに現場にいた方で、日本人としてはうれしい本です。ケガから復活してほしいなぁ。
読み物

読み物と言えば、この本はベストです。900ページ。これまで読んだサッカー本の中でもベスト3に入る力作。現在、世界最高峰といえるプレミアリーグの歴史を、開始年の1992年から紹介しています。概要ではなく、重要なゲームに関しては、1つのゲームの解説もしています。これほど深く一つのリーグを解説できるのが文化なのだと思います。Jリーグも30年前後で、同じくらいの期間やってるけど、このレベルで解説できる人はいないのではないでしょうか。長年のフットボールファンにも、サッカーを理解したい初心者にも、ホントにお勧めです。2017年10月、ロンドンまで観に行ったコンテ・チェルシーvsペップ・シティの解説の部分は、特に熱かったです。
ちなみに、イングランドのリーグは1888年から開始されており、1部リーグにプレミアリーグという名前がついたのが1992年です。その当時は、世界最高峰のリーグではなかったことも明確に書かれています。

プレイヤーを取り上げた伝記はたくさん読みましたが、特に好きな本。ヘンダーソンが好きというのもあるけど、熱い男でした。「フランスが生んだ“小さな王子”アントワーヌ・グリエーズマン自伝」「LIFE アンドレス・イニエスタ自伝」も面白かったです。伝記はたくさんお勧めありますね~。
練習法

間違っても、子供を”指導”するために、読むものではありません。それはコーチのお仕事です。プレイヤーが練習しているときに、何をポイントにして、何を学ぼうとしているのかを知っておけば、練習後、良かった部分を的確にほめることができます。できなかった部分は、プレイヤー自信も良く分かっています。

これもドイツですね。

これはフランス。この本は練習方法ではないですが、何をポイントにしているのかが理解できると思います。


イタリアだったり「図解イタリアの練習: カルチョ式戦術トレ-ニング244」、スペインだったり「Spanish Football Federation Coaching Program U9-12」、今の時代はたくさんのことが学べますね。ただ、正直言って、国による良い悪いは無いですし、私が見てきた国内のクラブチームでも同じような練習方法です。結局は「その練習で何を学ぶべきなのか?」を、プレイヤーにしっかりと伝えることができるかが違いになります。
分析


上はだいぶん古い本ですが、日本代表の分析官として長らく活動されていたらしい方の本です。間違っても、分析してプレイヤーを指導しようと思わなくて良いです。一緒にゲームを観ている際に、あのプレイ良いねとか、少しだけ言葉に出すだけで、どこをどう観れば良いかがすぐに伝わっていきます。なぜ、あのポジションのプレイヤーがあそこにいるんだろうね、あそこにパスしたんだろうね、あっちの方向を見ているんだろうね、と分からないことを聞いても良いと思います。
ゲームを観る視点が無いと、ボールを目で追うだけになってしまいますね。

データやテクノロジーを使ったサッカー分析の本です。ベースボールのセイバーマトリックスをサッカーに持ってこようとしている取り組みですね。ポゼッション率、チャンスクリエイト数、ヒートマップ、デュアル勝利数など、普通にサッカーを観ていると紹介される統計データから、あまり一般的ではないデータまで、サッカーという複雑なゲームを統計的に分析しようとしている人たちのお話です。
ポゼッション率のように単純に測れる数字は、誰もが分かりやすいですが、あまり有意な分析にはならないようです。どういう状況の際に、そのプレイヤーがどういう判断をしたかを分析して、そのプレイヤーがどうすれば改善するかを考える、のような数字を測ろう、使おうとしています。
センサー、画像解析など、テクノロジーが発達することで分かるようになり、改善することがありますね。
ロドリがいるチームは負けませんが、なぜ、ロドリが優れているのか、数字で分かるようになれば、ロドリを育てることも可能かもしれませんね。最先端の分野です。読みものとして面白いです。

古くから戦術分析をネット上に公開していた方の解説書。本場ヨーロッパでも、ネットで戦術分析を公開していた人が、本物のトップチームで、ラップトップコーチとして採用されることもある時代。どういう視点でゲームを観れば、本質が分かるのか、面白いのか、いろんな方の分析を読んでみると、サッカーがどれだけ複雑で、どれだけ面白いかが分かります。
「スカウト目線の現代サッカー事情 イングランドで見た「ダイヤの原石」の探し方」に書かれていましたが、「You see but you do not observe.(君は見ているが観察していない)」ですね。
最先端

私自身が最先端のサッカーを知っているわけではないですが、本当に面白い本でした。現在はドイツ監督のナーゲルスマンの戦術に触れることができます。教科書にはない考え方が出てきます。
442の各ポジションにはこういう特徴を持った選手が必要と考えるのではなく、こういう特徴を持った選手がいるから、こういう戦術にしようと考えていくことに特徴があるのかなぁと思います。
バイエルンの最後が、女性問題というのが悲しすぎる結末ですが。。。

この本も教科書的なサッカー感を壊される感じがしました。宗教ですか?というレベルです。
サラー、ファビーニョ、フィルミーノ、ファン・ダイクなど、誰もが知っているスター選手を題材に取り上げてくれているので理解しやすいです。

こちらは、「組織的カオスフットボール教典 ユルゲン・クロップが企てる攪乱と破壊」の前に書かれたペップ・シティの戦術について解説されています。こちらも、ウォーカー、ストーンズ、ダヴィド・シルヴァ、デ・ブルイネなど、スター選手を題材にしていて分かりやすいです。ロドリ以前のシティです。ダヴィド・シルヴァ、好きでした。

ほんとにおもしろかった戦術の本。キックオフ、フリーキック、コーナーキック、スローインごとに、それも、ファイナルサード、ミドルサードと、位置まで限定して、どういうセットプレーがあるのか、どういう基本があるのか、本当に目の覚める本でした。
サッカーのゲームを観ていると、「よく練られたセットプレーですね」という言葉が解説者から時々出ますが、どう練られたのか?が良く分かります。ロシアワールドカップでイングランドが大躍進したあたりから、バスケやアメフトの戦術が駆使され始めて、本当に面白い分野だと思います。

イタリアの考え方。監督というかマネジメントチームがどのように考え、プレイヤーの行動にどういう風に影響を与えようとしているかが分かります。
監督が戦略、戦術を作って、プレイヤーに指示を出すというやり方では、複雑なサッカーというゲームには対応できないので、どのようにプレーすべきなのか、どのように考えるべきなのか?をプレイヤーに、どのように落とし込むのか。ビジネス書に書かれている組織論みたいな感じかも。
サッカーというゲームを次のレベルに押し上げようという熱意がすごいです。
サッカー少年/少女の親の心得

コーチを含めて、サッカーを理解できていない外野からのアドバイスほど、有害なものはありません。アドバイスされる子供も意味わからないし、アドバイスしている外野も「なぜできないか?」が理解できないし、現場のコーチも注意しずらいし、誰も得しないです。そもそも、試合中にアドバイスされて(怒鳴られて)、改善するくらいなら、それはプレイヤーが理解できていたことなので、アドバイスする必要はありません。
「走れ!」や「球際!」、「シュート!」の掛け声はいりません。サッカーって難しいんだなぁと理解できる本です。

まさかの”バスケ”本。タイトルそのままなのですが、子供がスポーツを始めたら、知っておきたいことがたくさん書かれています。一部分は、バスケに特化していますが、スポーツの性質も近いので、学びが多かったです。親がしなければいけないことは、”サポート”であって、”指導”や”指示”ではありません。良い本です。
今、amazonで検索したら、サッカー版「子どもがサッカーを始めたら読む本<7人の賢者に聞いた53の習慣>」も出版されていました。

私は、もちろん、サッカープレイヤーの本分は勉強というスタンスです。だからこそ、遊びのサッカーは思いっきり楽しめる。プロサッカー選手が引退後のセカンドキャリアに悩んだり、名門高校のスター選手が卒業後に厳しい人生を歩んだりする話は、たくさんあふれています。サッカーだけ全力でというのは、あまりにも親としては無責任です。東大に行かせないととは思いませんが、自身が人生を選べるように話してあげる義務はありますよね。

とても異質な本ですが、サッカー少年クラブを経営していくサイドを解説した本。生々しい声がたくさんあって、知っているチームが書かれているかもしれません。
そもそも論として、1人10,000円程度の会費を集めて、プロのコーチが教えるサッカークラブを経営することは無理です。プレイヤー100人でも、売上100万円しかないわけですから、会場、用具、移動が精いっぱいじゃないでしょうか。100人いたら、コーチは3、4人は最低でもいますよね?全部で100万円じゃ生活できません。それ以外の収益が無ければ経営できないのです。
サッカー少年/少女の親は、ボランティアで指導してくれているコーチに対して、それほど多くのことを求めるべきではありません。街クラブのコーチは、サッカーが好きで、ボランティアで指導してくれているんだということを忘れてはいけないのです。そこらへんの仕組みが良くわかる本です。
サッカーが好きだからで、コーチ業を始めたいと考えている若い方も読むべきです。コーチ業は、サッカー以外の社会人スキルがたくさんないと続けられないから。